日本政府、またジカンバ耐性遺伝子組み換えの承認へ

 また日本はジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆を追加承認しようとしている。このジカンバをめぐり、米国ではReuterが特集を組み、New York Timesなどのメディアもその甚大な被害やその訴訟について報道しているというのに、たぶん、日本のマスメディアは完全に黙殺だろう。
 ジカンバとは古い除草剤で、価格も安く長く使われてきた。しかし、とても流出しやすく、使う場合にはよほど注意する必要があるといわれる。なぜ、その古い除草剤が今、問題になっているのかというと、モンサントの農薬ラウンドアップがもう効かなくなってしまったからだ。ラウンドアップを撒いても雑草はもう枯れない。遺伝子組み換え大豆に飛行機でラウンドアップを撒けば大豆だけが残り、雑草はすべて死ぬ、というのがモンサントの描いた絵だったが、かけてもかけても雑草は枯れなくなった。そこでモンサントはこの古いジカンバをラウンドアップに混合することでその落ちた効力を補おうとした。
 しかし、ジカンバは流出しやすい。遺伝子組み換えのように作物の上から一面に大量に撒いてしまえば、周辺の農場や植物もやられてしまう。そして、その怖れていたことが起こった。
 すでに25の州、360万エーカー(146万ヘクタール、日本の全農地の3割以上に相当)で被害が出て、少なくとも5つの集団訴訟、2つの単独訴訟が起こされている。悲しいことにジカンバをめぐる紛争で死者まで出ている。それだけ大問題になっている。
 こうなることはすでに2011年から科学者がモンサントに警告していた。それにも関わらず、モンサントはジカンバ耐性大豆の種子の販売を2016年に開始してしまった。環境保護局(EPA)がモンサントのジカンバ・ラウンドアップ混合除草剤XtendiMaxを承認する前だ。モンサントの販売員は許可はすぐ下りるからと農家に言って、種子を買わせた。しかし、許可は下りなかった。そのため、農家は古いジカンバを大量に撒いた。違法行為だ。そのためにこのロイターの地図にあるような広大な地域で広大な地域が影響を受ける事態になってしまった。その後、EPAはモンサントのXtendiMaxを承認したが、これも古いジカンバと同様に流出する危険が指摘されている。
 この地図でもっとも被害を受けた地域はコーンベルトと呼ばれる大豆・トウモロコシの穀倉地帯だ。日本に輸出される大豆やトウモロコシもこの地域で主に作られる。
 汚染地域ではもし、このジカンバ農薬への被害を免れるためにはモンサントのジカンバ耐性大豆を買うしかないという悪夢のシナリオがすでに現実のものになりつつある。モンサントのジカンバ耐性大豆であれば被害なく収穫できる。しかし、みんながそうなれば危険はさらに高まる。モンサントの大豆以外、すべての植物は影響を受ける。他の植物が死滅し、モンサントの遺伝子組み換え作物しか育たないというのは悪夢だろう。しかし、ラウンドアップと同様にすぐに雑草はジカンバに対する耐性を獲得して、ジカンバは効かなくなるだろうと推測されている。しかし、対応できなかった植物は絶滅してしまうかもしれない。被害は取り戻すことは不可能だろう。
 このジカンバ、流出しやすいだけではない。「(ベトナム戦争で使われた)2,4-Dと同じようにグリホサートより環境への悪影響度が高い。それどころか、科学的にはジカンバは2,4-Dの従兄弟ともいえる」『遺伝子組み換えのねじ曲げられた真実』日経BP社
 今、世界が騒いでいるグリホサート(ラウンドアップの主成分)よりもさらに悪影響が高いと言われているのがジカンバなのだ。グリホサートが騒がれるのは使用量がずば抜けて多いからだ。ジカンバの使用が多くなればグリホサート以上の脅威となる。

 それにも関わらず、日本ではジカンバ耐性遺伝子組み換えは2013年以来、続々と承認されている。今回のジカンバ耐性大豆の承認をめぐる検討会では上記に書かれたことは話題になるだろうか? まったくならないだろう。検討会では3つの点、野生動植物を駆逐しないか、有害物質を産生しないか、近縁野生種との交雑性に変化がないかだけについて、モンサントの提出した資料を元に雑談するだけだ。農水省は一切実験もしない。日本の大豆に影響を与えるとしてもそれは議論の対象とならない。野生の種類に影響を与えなければ審議の対象にならない。そもそも、日本は遺伝子組み換えがもたらす被害を評価できない制度を作ってしまっており、わずか上記の3点パスすれば実質的に自動的に承認される(農水省の他、別途食品としての承認プロセスがある。内閣府食品安全委員会)。この枠組みが問題だ、という話しは一切出ない。
 世界でも日本のようなスピードで次々に遺伝子組み換え作物を承認する国は米国以外にはない。米国政府の方がジカンバや2,4-D耐性遺伝子組み換え作物の承認は日本よりも慎重だった。それだけ市民が反対しているからだ。日本ではマスコミはこのジカンバや2,4-D耐性遺伝子組み換えの問題について報道しているのを見たこともない。米国のメディアはたびたび報道しているのに。日本は世界でもっともやばい国になりつつある。

 この農水省・環境省の検討会ではモンサントのジカンバ耐性大豆だけでなく、日本産の遺伝子組み換えトマトなども審議の対象となっている。それもまた問題にしたいところ。

ジカンバがどれほど広く被害を与えているかがわかる。Dicamba drift damage

ジカンバ問題のクロノロジー(年表) The seeds of Monsanto’s weed-killer crisis

Special Report: The Decisions Behind Monsanto's Weed-Killer Crisis

「平成29年度 第1回生物多様性影響評価検討会総合検討会」の開催及び一般傍聴について

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