大問題の種子法廃止をめぐる農水省事務次官通達

 種子法廃止をめぐり、農水省事務次官名で11月15日に通達が出されている(農水省のサイトに掲載されている通達)。

 大きな問題だと思うので、感じた問題点をまとめておく。

 この通達、主要農作物種子法に基づく主要農作物種子制度運用基本要綱の廃止などを指示したものだが、いつからこの通達が実施されるのか明記されていない。しかし、識者によると明記されていなければ通達が出た日から実施だという。しかし、種子法は来年3月31日までは存続しているはずだ。それなのに早くも今、種子制度を終わりにしてしまうとしたら、なんということだろう。
 次に気に掛かるのが、この通達で気になるのが種子計画について何も言及がないことだ。種籾を作るには4年はかかる。急に足りなくなったからといって作れるものではない。だから需要に応じて過不足なく作るためには計画が必要となる。都道府県別に計画を作り、さらにそれを日本全国で調整させる。それはこの基本要綱で規定されていた。それを廃止したら種子計画はどうなるのか?
 その一方で、「都道府県内における稲、麦類及び大豆の種子の生産や供給の状況を的確に把握し、それぞれの都道府県の実態を踏まえて必要な措置を講じていくことが必要である」と通達には書かれている。では、都道府県は何に基づき、種子を生産するのか、それは書かれていない。計画策定とその調整なしには需要に応じた生産は不可能だろう。計画なくとも神の手が働いて不足など起こらないと信じろというのだろうか?
 民間企業が現在出している品種は基本的に外食・中食向けの業務米、原料米であって、消費者向けのコメではないし、そうしたものはすぐ出てくるものでもない。出てきたとしたら余計に種子の計画生産は難しくなるのではないか? 民間がどれだけ作るか、把握する手段があるのだろうか? 民間企業は儲かれば作るだろうし、儲からなければ生産を止めることもありうるだろう。突然、種子が足りなくなる状況は想定しうるはずだ。それを避けるためにどのような手段を講じるのか、まったく書かれていない。そのような事態にどう責任を取るのか、不明である。
 もう1つ、疑問なのは通達の3ページ目「4 稲、麦類及び大豆の種子の品質の確保」にかかれている内容だ。これまでは特定品種について流通前に生産圃場で品質を確認して証明書を発行してきたが、今後は流通の場面で民間含めたすべての種子の検査を行う、とある。
 これまでは奨励品種や産地品種銘柄に指定された特定品種のみ認証されて、独占的なルートに乗り、そうでないものは排除されて、品種名を表示することもできず(「その他の品種」としてしか表示できない)、個々で細々と売るしかないという状況であり、そこがこれまでの種子制度の排他的な点として批判されることもあったと思う。しかし、今後、すべての種子の検査を流通場面で確認するとなると、これまで自由に売ることができていた種子が流通の中で規制されてしまうことにならないか、気になる。
 種子の多様性を確保しなければ今後の気候変動の荒波を乗り越えることは難しく、その意味で、特定品種だけではなく、農家の人たちが育てている多様な品種を生かしていくことはさらに重要になっていくだろう。これは日本政府も批准している食料・農業植物遺伝資源条約が明記しているところだ。日本政府はこの国際条約を批准しているのだから、それを実行に移すことが求められているはず。それを実施していくためにも、そうした農家の種子を守る姿勢を明らかにする必要がある。

 この条約の第9条2項には「締約国は、農民の権利(Farmers' Rights)が食料及び農業のための植物遺伝資源に関連する場合には、これを実現する責任を負うのは各国の政府であることに合意する」と明記されている。

 国や都道府県が種子の自由な流通を規制しないことを明言させる必要があると思う。

 現在、世界人権宣言の流れをくむ小農民と地方で働く人びとの権利宣言が国連で今年6月に成立する予定だった。しかし、米国政府の反対と日本政府の棄権(実質的反対姿勢表明)などで、成立が来年に遅れることになってしまった。日本政府は小農民の権利を独立した新たな権利として認めないという立場表明を国連でわざわざしにいっている。起草作業にはまったく無関心であったにも関わらず。しかし、その態度は日本政府が批准している食料・農業植物遺伝子資源条約での文言とは矛盾するものではないか?
 日本政府はいったい何を根拠にこのような態度表明をしたのか、疑問だ。果たして、どんな国会での議論を元にそうした態度が決定されたのか? それとも官僚の独走なのか?

 農業での生物多様性を守ることの重要性、大規模農業ではない小規模家族農業の重要性が国際的に叫ばれている。そこからかけ離れた日本政府の施策に対して、国会でどう方向を正すことができるか?
 来週、12月5日には参議院農林水産委員会が開かれる。ぜひ注目を!

食料・農業植物遺伝資源条約条文(日英)

国連小農民とその他の地方に住む人びとの人権宣言ワーキンググループ
Open-ended intergovernmental working group on a United Nations declaration on the rights of peasants and other people working in rural areas

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