世界化するアグロエコロジー運動

2014年におけるアグロエコロジーの世界化は特筆すべきものとなったと言えるのではないか?

アグロエコロジーの定義

まずどうしてもアグロエコロジーとはなにかを説明しておかなければならないが、アグロエコロジーは生態系を守るエコロジーの原則を農業に適用したものとされる。それは同時に科学であり、農業の実践であり、そして社会運動であると定義される。

Summary for Decision  Makers of the Latin America  and the Caribbean (LAC)  Report 9ページから

Summary for Decision Makers of the Latin America and the Caribbean (LAC) Report 9ページから

アグロエコロジーはコンセプトとしては科学として発達し、その後、農業実践の中で鍛えられ、食の運動の中で再定義されていくという歴史を経ているため、現在は科学であると同時に実践であり、社会運動でもあると定義される。それゆえ定義は多岐にわたる。

アグロエコロジーとは伝統的な小農民や先住民族の持っている知恵と科学的知識との対話である、という定義も重要な定義である。

そして、現在の食のモデル(小規模生産者をのけものにする大量生産と大量廃棄、農薬、保存料などの化学物質まみれの食品など)の問題を問いなおすこと、オルタナティブな食のシステムを提案する、その際に、小規模生産者や消費者の主体的役割を強調する点も重要な要素と言うことができる。

収奪型大規模農業による土壌の破壊、水資源の崩壊、気候変動、小農民追い出しによる飢餓の拡大に対して、アグロエコロジーによる小規模家族農業がいかに有効であるかは、その運動の世界的な広がりによって証明されるだろう。その広がり方を見てみたい。

アグロエコロジーの広がり

ソ連型大規模機械化農業がソ連の崩壊によって不可能になったキューバや、ブラジルの大地主と対決する土地なし農業労働者運動や小規模家族農民の農民運動などで大きな運動となっていった。

このアグロエコロジー運動は2000年代にラテンアメリカやアフリカに広がり始めた。しかし、南(第三世界)の国ぐにだけではない。たとえばフランスや英国ではアグロエコロジーが持つ意味について本格的な探求が行われ、フランスではその探求の成果として今年9月に農業未来法として結実した。イギリスでも2013年1月にアグロエコロジー連盟が作られ、政府の政策の変更を求めてロビー活動を本格化させている。
‘Agroecology Alliance’ launched at alternative farming conference

この動きが決定的に世界化した歴史的イベントは世界食糧農業機構(FAO)が今年9月に開いた国際シンポジウムかもしれない。このシンポジウムには世界から400人が集まり、小農民の国際組織 Via Campesinaやラテンアメリカ・アグロエコロジー学会などこの間、アグロエコロジーの発展に関わってきた組織も参加した。
FAO: International Symposium on Agroecology for Food Security and Nutrition
世界の70人の科学者がこのFAOのイニシアティブを歓迎し、国際機関が継続的に世界でアグロエコロジーの発展のために実際的な貢献を行なうことを促している。
Scientists praise and challenge FAO on agroecology

今年は国際家族農業年だが、アグロエコロジー運動にとっても大きな飛躍の年となったことは間違いないだろう。

アグロエコロジーの換骨奪胎に警戒する小農民運動

アグリビジネス多国籍企業ロビーの影響力の強い国際機関に対して、Via CampesinaはFAOのアグロエコロジーへの取り組みに対しても、その取り組み自身を歓迎しつつも、多国籍アグリビジネスによってアグロエコロジーが換骨奪胎しようとすることに対して警戒を怠っていない。
Via Campesina: International Symposium on Agroecology at the FAO in Rome

実際にアグロエコロジーがいわば世界的なブームとなり、この言葉の意味を換骨奪胎して奪おうするような試みもすでに起きている。

たとえば、2010年にはフランスのマクドナルドが、環境負荷を減らす「アグロエコロジー戦略」を公表した。しかし、その概念にはアグロエコロジー的な実践が曖昧にしか定義されておらず、実際的にはアグロエコロジーを骨抜きにしたものだった。
Agroecology – What it is and what it has to offer 9ページ

アグロエコロジーのキーとなるコンセプトは「緑の革命」などの化石燃料を使ったモノカルチャー農業とそれを推進する多国籍アグリビジネスとの闘いの中で作られてきた。アグリビジネスにとってはそれらは脅威であろう。それゆえ、そうした要素を曖昧にして、彼らにとって無害なコンセプト、動きにしてしまおうとすることは十分予想できる。米国で有機食品ブランドのほとんどが多国籍企業の支配に入ってしまったような事態がアグロエコロジーをめぐる動きで生まれないとは限らない。

しかし、アグロエコロジーを進める小農民運動、消費者、学者は相互のネットワークを強化しつつあり、それは容易に揺らぐことはないだろう。

問われる日本の政策

日本政府は、こうしたアグロエコロジーや小規模家族農業の推進には背を向ける政策を行ってきているといわざるをえない。

マスコミを通じて流れるのは「輸出できる強い農業」であったり、「農業分野への企業参入の推進」ばかりである。一時代前の大規模農業推進が未だに日本政府の中で進んでいる。国内自給率が先進国の中で飛び抜けて低いにも関わらず、TPP、自由貿易を推進し、さらに自給率を下げる政策を打ち出している。

さらに国外ではモザンビークで大規模輸出型機械化農業の推進を行おうとして、モザンビーク農民に強い憤激を引き起こしてしまっている。

世界でアグロエコロジー運動が盛んになり、各国政府の政策にもそれが採用され始めている現在、日本政府のこのような姿勢が問われなければならない。

国際家族農業年から始まる小規模家族農業の道チラシ

印刷版チラシダウンロード

11月24日にフランス農業開発研究国際協力センター(CIRAD)の研究者を迎えたシンポジウムが開催される。そして翌日には参議院議員会館にて、院内集会が開催される予定だ。

この機会に世界の動きと、日本の差をじっくり検討し、日本の政策を考え直したい。

ぜひご参加をお願いしたい。

国際家族農業年から始まる小規模家族農業の道ーフランス農業開発研究国際協力センター(CIRAD)の研究者を迎えて

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