アルゼンチン、遺伝子組み換え大豆の農薬噴霧で居住不能になった町

アルゼンチンでは遺伝子組み換え大豆の耕作が急激に増加し、全農耕地の6割を超すほどの巨大なモノカルチャーとなっている。この大豆耕作に伴い、モンサントのラウンドアップなどの農薬が大量に使われるようになり、大きな健康被害と環境破壊を生み出している。その実態をTengaiというエクアドルの環境問題のニュースを扱う市民メディアがアルゼンチン医師のインタビューを通じて明らかにした。

このように深刻な健康被害、環境破壊をして作られる大豆はヨーロッパや日本を含むアジアの家畜の餌やバイオ燃料として輸出される。彼らの被害は日本のわれわれと無関係でなく、彼らの苦しみはやがて家畜の肉を通じてわれわれの体にも入ってくるかもしれない。その意味でも他人事ではない。

スペイン語の翻訳をしていただいたものを以下に掲載する。

ニコラス・ロジャカノへのインタビュー(仮訳)

ロジャカノ氏は小児医学専門のアルゼンチン人医師で、遺伝子組み換え大豆の農薬が空中散布されている地域の近隣の住民の健康被害に近くから取り組んできた。

テガンタイ(以下T):アルゼンチンでの遺伝子組み換え大豆への農薬の空中散布の影響について知りたいのですが、そうした栽培地の近隣に住んでいる住民の健康状況はどのようなものでしょうか。

ロジャカノ(以下L):アルゼンチンは現在政治的な後退の過程にあり、農村の人びとはその影響にもっともさらされているのですが、農薬の散布と遺伝子組み換えだけでなく、認識能力の低下、自己免疫系統の病気にかかったり、発がん性物質や不妊その他にもさらされています。大豆の海に囲まれた村では、農薬の空中散布もされているし、人の住居と畑もほんの通り一本隔てただけだったり、中庭のすぐ裏が畑だったり、畑の近くに学校があるというように近接しているのですが、そうした人口5千から1万人の小さい村にいくと、農薬散布のそばにいる人たちのみならず、すべての住民にとってとても影響が大きいことはすぐわかります。

誰もその影響から逃れることはできず、内分泌系・生殖系・出生率などの問題が体系的に再生産されています。行動認知神経系の能力を低下させる病気の発生率はとても高く、自閉症の子供も多くいます。主に農村地域で250人に1人の自閉症の子供がいるのが私たちの現状ですが、これはアメリカ合衆国のレベルである69人に一人(男児)の数に近づいています。ですから私たちは化学合成農薬の使用と自閉症のような病気を関連づけることができるのではないかと考え始めています。一方で不妊率は若く健康なカップルのあいだで20-25パーセントになろうとしています。

政府の政策はこうした問題を隠そうとしており、この危機的状況を前にあえて皮肉にいわせてもらえば、この状況をカバーするためにすべての住民への租税負担を伴う出生率支援策が必要なのではないでしょうか

T:大豆の大規模栽培がおこなわれているこうした地域での子どもたちの健康状況はどのようなものですか?

L:複合的な問題を抱えています。たとえば、免疫系統の重篤で目に見える疾患もありますし、多様な数多くの白血病、様々なガン、腎臓芽腫や網膜芽腫という珍しい病気を持って生まれる子どもたちもいますが、これは遺伝形質の低下が頻発していることや、それが子どもたちの人生の早い段階で現れることを示しています。一方で私たちは多くの皮膚の異常、てんかん、あらゆる種類のけいれんの症状、内分泌系にかかわる多くの症状を目にしました。少年たちの間には発育不良や、逆に発育しすぎるという問題を抱えている子もいますが、それはこのような毒性物質や、遺伝子組み換え作物の消費によってもたらされる内分泌軸の変質によって引き起こされたものです。

また、行動にも異常が見られます。無症候のADHDが子どもたちの間に見られています。そしてこれに影響される人口が増えつづけているために、まるであたりまえのことのようにとらえられ、子どもたちは本来自分に合わない学年に編成されています。

今年私たちが発表する最新の研究のひとつでは、私たちは特別学校にいる子どもたちの人数に注目しています。1万人の住民のコミュニティで、100-150人の子供たちが特別学校にいるのですが、その数は現在のような大豆生産のシステムとそれに伴う農薬散布のなかった15-20年前に比べるとほぼ三倍になっています。

T:こうした健康被害の解明のためにどのような研究を実施してきたのですか

L:人間に対する直接の影響の研究というのはとても難しいのですが、私たちにはケーススタディが可能な患者たちがいますし、健康調査も実施されていますし、横断的な流行病の状況の研究もされています。

しかし、問題なのは政府がこうした情報を集約し、データへのアクセスが難しくなっています。また当然のことながらこうした情報は断片的なものです、というのも医師たちには、こうした問題を摘発したり、関連した研究をする知識や能力がかけているからです。こうした問題について深く知る医師というのはごく少数なのです。現在のところ、私たちはアルゼンチンでもっとこの問題を知ってもらうことや、しっかりと問題を認識できる専門家を養成することに努めています。私はアルゼンチンに戻ったら、この状況を支えるために2、3の研究をするつもりです。

T:イトゥサインゴ・アネクソ地区で、大豆栽培地での農薬散布が健康に与える被害と戦っているゴールドマン賞受賞者のソフィア・ガティカは、エクアドル滞在中にパンアメリカ保健と政府組織においてこの地区は「人間が住めない」ところだと明言していましたが、あなたはイトゥサインゴ・アネクソ地区の人びとの健康状況をどう説明しますか?

L:現在の状況は平均寿命が50歳に届いていません。国全体での疾患の罹患率よりも、発病率はほぼ4倍です。このような地域で生活するのはとてもむつかしいですが、同時にここから出ていくことも難しいです。汎米保健機構と政府組織が来たとき、ここで起こっていることについての研究発表をすると、彼らはこの地区は人が住めない土地だと明言しましたが、しかし、そのように宣言することは政府にここから連れ出すための権利を与えてしまうともいえます。このようなことは鉱業開発の場合も何度も起こっています。人々に与える影響を配慮して、という口実で人々を移住させた方が安くつくからです。そのようなことも私たちは考慮に入れておかなければなりません。いずれにしてもこの私たちみんなに影響を与えていることは現実であり、この地区は人が住めませんし、その原因は農薬の散布なのです。

T:このような現実に対して政府はどのような対策をとっているのですか、農薬散布を規制しているのでしょうか、それか大豆耕作地の拡大を許可しているのでしょうか。

L:政府は経済的な影響を与えないような場当たり的な対策をいろいろ推し進めています。大豆栽培は広がりつづけています。最近5年間で作付面積は2000万ヘクタールから2400万ヘクタールに拡大し、耕作可能な全農地の57%から63%に増えました。2009年から2011年の間にラウンドアップの使用量は年間3万リットルから3万6千リットルに増えたのですが、このことからはラウンドアップの使用量が耕作地の拡大に比例してではなく、面積あたりの使用量が増えたことをしめしています。

一方でこうした問題を取り扱うのは一般的に地方自治体であり、ここでは自治体首長たちはスーパーなどで同じような問題を抱えた人々と出会うというように批判にさらされています。大豆の空中散布は都市区域からは500-1000メートルと制限することは、場当たり的な対策です。しかしながら、こうした場当たり的な対策が興味深いデータを私たちに供給しています:サンタフェ州のサンホルヘでは、3年前から居住区域からの距離が1000メートル以内では農薬散布を禁じています。そしてそれ以来葬儀社の稼働は30パーセント減ったのです。


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